11月18日、FIA世界耐久選手権(WEC)第5戦の上海6時間レースが開催され、アストンマーティン・レーシングの新型Vantage GTEが初優勝を飾りました。波乱の展開となったこのレースで、デンマーク人ドライバーのニッキー・ティーム/マルコ・ソーレンセン組の95号車が、完璧な判断を下してこのレースを制しました。2016年のFIA WEC GTE Proクラスで総合優勝を果たしているこのコンビは、降り続く豪雨により5回もセーフティカーが導入され、2回にわたって赤旗中断(合計90分間)されたこのレースで、巧みにレースをコントロールしてチームに勝利をもたらしました。
GTE Proクラスに参戦したアストンマーティン・レーシングの95号車と97号車は、厳しいコンディションが続く中で1-2体制を築き、一時はマキシム・マルタン(ベルギー)/アレックス・リン(英国)組の97号車がトップを走行する場面もありました。レース終了1時間前までは、1-2フィニッシュによる完全優勝を収めるチャンスも残されていました。しかし、チームは、レース序盤の時点で、優勝の可能性を最大限に高めるため、この2台に異なる戦略を採用することを決定していました。この戦略に基づき、97号車は、最終スティントで95号車よりも早いタイミングで最後のウェット・タイヤに交換します。しかし、タイヤのグリップが低下したレース終盤に雨が強まった影響によりポジションを落とし、97号車は最終的に4位でチェッカーを受けました。
レースが終盤に向かうにつれ、天候と視界が悪化してコンディションがますます不安定になる中、優勝の可能性は95号車に絞られることになります。ティームは、レース中盤のスティントでいつも通りのハードな走りでレースの主導権を握り、ソーレンセンにステアリングを引き継ぎます。ソーレンセンは、レース終了直前に導入されたセーフティカーによって、ライバルとのタイム差がほとんどなくなるという大きなプレッシャーを受けながらも、冷静な走りで歴史的勝利を収めました。
「本当に長く、そして非常に難しいコンディションのレースでした。」と、ソーレンセンはレース後にコメントしています。「ニューマシンで最初の勝利を挙げることができて、最高に嬉しいです。まるで総合優勝をかけて戦っているかのように、全力で走りました!チームがハードワークを続けてくれたおかげです。“スーパーシーズン”序盤は苦しい展開でしたが、2018年最後のレースを勝利で締めくくることができて、素晴らしい気分です。来年開催される次戦のセブリングまでに、マシンをさらに熟成することに集中します。」
ティームは、次のように語っています。「新型Vantage GTEの投入が大きなターニング・ポイントになりました。チーム一丸となってハードワークを続け、ついに表彰台の頂点に立つことができて感無量です。チーム全員の努力が報われました。今日の勝利は、もっとも戦闘力のあるマシンで走り、戦略が見事に的中し、すべてのスタッフが完璧に仕事をやってのけた結果です。アストンマーティン・ファミリーの一員になれたことはもちろんですが、Vantage GTEの最初の勝利に貢献することができて、大変誇らしく思っています。大混乱となったレースでしたが、完璧な結果で終わることができました!」
今回の優勝は、通称“DaneTrain”(デンマーク号)と呼ばれる95号車にとって、2017年のメキシコ以来の勝利となりました。偶然にも、Vantage GTEの一世代前のモデル、V8 Vantage GTEも、2012年に同じサーキットで初優勝を遂げています。アストンマーティン・レーシングは、中国のレースでは常に好成績を収めており、GTE ProクラスまたはGTE Amクラスのどちらかで優勝または2位でフィニッシュを果たしています。
アストンマーティン・レーシングのマネージング・ディレクターを務めるジョン・ガウは、次のように述べています。「アストンマーティンの新型Vantage GTEで初優勝することができて、最高の気分です。ポルシェは、新しいGTEマシンで勝利するまでに15戦を要しましたが、私たちはわずか4回レースに参戦した後にそれを成し遂げることができました!今日は、おそらくWEC史上もっとも複雑なレースだったと言えるでしょう。また、ルマン24時間レースを除けば、GTE Proクラスにとって、もっとも競争の激しいレースでもありました。このクラスには、今回初めて11台ものマシンが参戦していたからです。さらに、私たちのマシンが今日履いていたタイヤは、直接のライバルが履いていたタイヤとまったく同じミシュラン・タイヤだと知って、喜びが倍増しました。つまり、今日のレースでは、私たちのマシンが一番速かったということです。スタッフ全員で喜びを分かち合っていますが、大健闘した97号車は少し残念な結果となりました。私たちは優勝を目指していましたので、参戦した2台のマシンに、レースを通してまったく同じ戦略を採用することは当初から考えていませんでした。95号車には最善策の次に考えられる戦略を採用しましたが、結果的にその戦略が功を奏したことになります。97号車は、レース最後のフル・スティントを摩耗したウェット・タイヤで走行する必要がありました。」
GTE Amクラスでは、ディフェンディング・チャンピオンのポール・ダラ・ラナ(カナダ)/ペドロ・ラミー(ポルトガル)/マティアス・ラウダ(オーストリア)組のアストンマーティンV8 Vantage(98号車)が予選でポールポジションを獲得し、決勝レースでは5位でフィニッシュしました。その結果、GTE Amクラスのチーム・ランキングでは、かつてのポイント・リーダーにペナルティが科されたこともあり、アストンマーティン・レーシングが2位に浮上しています。ランキング・トップとのポイント差は、(優勝ポイントよりも少ない)20ポイントとなっています。
第6戦のセブリング1000マイル・レースは、2019年3月15日(日)に米国フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで開催されます。